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仲間達の事を語るのはたやすい。みんな馬鹿で単純な奴らだからだ。 たとえば狐。彼は言うならば虎の威を借る狐。うさぎの腰巾着で、自分の意見を持たない。服のセンスも駄目だ。いつも同じものを着ていて、上半身には白と茶色が混じりあったようなよく分からない色のシャツを着て、下半身はよれよれの迷彩柄のパンツだ。汚らしいサンダルをはいていて、彼の靴下をはいてる姿は見た事が無い。僕は服装がださい奴はあまり好きになれない。 ドアが唐突に開かれて、先程外に出て行った羊が戻ってきた。 「やってくれたな、お前あの車の名前知らなかったのか?」 僕は飲み終えた缶ビールを手でくしゃりと握り潰し、部屋の隅に放り投げた。 「知らない。でもスポーツタイプでさ、なかなかかっこいい車だと思ったよ」 羊はため息をつき、煙草を取り出して火をつけて吸った。 「アストンマーティンだ。お前あの車が幾らするか知ってんのか?」 知らない、と僕は首を横に振る。 羊はサブリーダー。彼は直情型のうさぎとは違って冷静沈着、いかにも頼りになるって感じのクールな男だ。彼が一番グループの中でまともかもしれない。 「本当に知らないってのか? お前『007』観た事ないのかよ。ボンドカーだぜ」 そう言ったのは蛇。色んな情報を持ってて、クスリの取引の話を持ってくるのは主に彼。根っからのジャンキーだ。ヘロインの打ち過ぎで痩せ細った体をしてて、いつも危ない目つきをしてる。
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