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「いつもの悪い夢を見たの? すごく、うなされていたから」
レンは僕の顔を心配そうに覗き込みながら言った。
僕はぼんやりと目を開けながら、夢で良かった、と思った。世界が崩壊するのが現実ではなかったからではなく、ただ夢の形に納得がいかなかったからだ。いつも見るあの夢は、まだ不完全な形をしていた。僕はいつになれば、僕の求めている夢を見る事が出来るのだろう。
「コーヒーを入れてあげる。熱くて苦いのを飲むといいよ。シャワーも浴びたほうがいいわ。汗、かいたままだと風邪引いちゃうから」
僕が頷くと、レンは僕の顔を覗き込むのをやめて立ち上がり、台所に消えていった。僕はのろのろとベッドから抜け出し、ガラスのテーブルに置いてある中身の半分だけ残った、昨日のぬるい缶ビールを一気に飲み干した。途端に口の中に胃液が貯まり、僕はトイレに駆け込んで嘔吐した。茶色い液体がごぼごぼと口から流れ落ちた。昨日はチョコレートを食べ過ぎていたから。
大丈夫? と台所からレンの声が聞こえた。
僕はふらふらと浴室に向かい、冷たいシャワーを浴びた。体が熱かったからだ。
シャワーを浴びている間、自分はずっと冷たい水を求めている気がした。
シャワーを終え、トランクスだけをはき浴室を出る。レンがタオルを渡してくれる。
「疲れたのね。昨日はすごく盛り上がったから。あなた、一番はしゃいでいたもんね」
「俺は決めたよ、クスリはもうやらない」
レンは僕が言った事は無視し、コーヒーいれたから、とだけ言った。
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