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レンがいれてくれたコーヒーはとても苦くて、舌を痺れさせた。
「レン、聞いてるのか? 俺はこれからは完璧にクスリとは縁を切るよ」
レンはまだ火の付いていない煙草を口にくわえ、僕の目を一瞬だけ見る。あらそう、とでも言いたげな目で。
信じないのか? と僕が言うと、うん、と言った。
「それよりもね、アレックスがさ、チョコレートが安く入ったんだって。ほら、アレックスが前に酔っ払って絡んできたチンピラを逆に半殺しにしちゃってさ、覚えてる? あの時のチンピラがさ、チョコを譲るから、見逃してくれって。シルバーとゴールドだけじゃないんだって。プラチナもあるんだって」
「ああ、覚えてるよ。にしてもアレックスの奴やるなあ。プラチナのチョコなんて一度も食った事無いよ、ゴールドでさえ盗みかなんかやって金に余裕ある時にしか買えないしさ」
「一度は食べてみたいよね、プラチナ。アレックスが私達にも安く売ってくれるんだって。どうする? でもさ、そのお金があるならヘロインのほうがいいよね? 注射器でブスっとさ、そっちのほうがいいよね?」
「レンが好きに選べばいいよ。俺はもうクスリはやらないから」
僕はコーヒーを飲み、レンのまだ火のついていない煙草をもらう。ライターで火をつける。煙りを深く吸い込み、吐き出す。酔いはまだ完全には醒めていなくて、こめかみが少し痛んだ。
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