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「私、少し痩せたと思う?」
レンは引き締まった腹を僕に向けて言う。いつもと変わらない、美しい体型。
いつもと変わらないよ、と僕が言うと、分からない人ね、と呆れながら言った。
「あなたの為に、いつまでも綺麗な私でいてるのよ。食事制限したりジムに通ったり。感謝してよ」
「レン、腹ぺこなんだ。ラリってぶっ倒れるように眠って悪い夢を見た時はいつもそうだよ。すごく腹ぺこだ」
レンは僕の口から煙草を取り返し、口にくわえながら、「自分の餌は自分でとらなきゃ駄目よ。そんなんじゃアフリカのサバンナでは生き残れないわよ?」と言った。
僕はまた少し気分が悪くなってきたので、机に突っ伏してそのまま目を閉じた。ここはアフリカのサバンナではないので、だらだらと過ごしていてもライオンに食べられる事など無かった。
「ねえ、今夜はどうするつもりなの?」
なにがだよ、僕は目を閉じたまま答える。
「《蜘蛛の巣》に帰るの? 泊まっていく?」
「レン少し風に当たりたいんだ。窓をちょっとだけ開けてくれないか」
レンは立ち上がり、小さな窓を少しだけ開けた。窓を開ける時に伸ばされたレンの細い腕を見ていると、ぼんやりとした意識が重たくなってきていた。
「眠いよ。最近は毎日ぶっ続けで飲んで騒いでたからなあ。あんまり寝てないんだ」
「少し休みなさいよ。ねえ、今夜はどうするのよ?」
「帰るよ。うさぎがうるさいからさ」と僕はまどろみながら言った。
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