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「私好きな人ができたんだ……」
君の言葉を理解した瞬間全てが色褪せて見え、僕の中の何かが壊れた気がした。
なぜか蝉の声がやけに耳に入ってくる。
小さな頃からいつも一緒だった君……
眠たい目を擦りながら毎日一緒に登校してくれた君……
僕のバカな話を聞いて笑い飛ばしてくれた君……
とろけるような優しい笑顔を僕に向けてくれる君……
その全てが僕の掌から零れ落ちていく気がした。
それでも今の関係を少しでも無くしたくなくて答える。
「よかったじゃん。応援するよ」
「そか……」
堪らなく自分が嫌いになった。
幼なじみという今の心地いい関係を壊しくなかったから君に想いを告げるなんて考えてなかった……
君が僕から離れて行くなんて考えもしなかった。
けど……けど……!けど!!
視界がぼやけ、溢れ出す感情の奔流を押さえきれず僕は彼女を後ろから強く抱き締める。
「きゃ!?」
「君が好きなんだ……他のやつに渡したくない」
彼女はいつもの優しい声で答える。
「バカだなぁ……私が好きになったのは――」
もうすぐ夏休み、僕達の夏が始まる。
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