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太助は剣術と柔術、久美は砲術を専門に教えた。
「遅い!!そんなんだと、火薬を積めてる間に敵に狙い撃ちされてしまうぞ!」
「す、すみません…っ」
「謝らなくていいから手を動かす!」
「はいぃぃ!」
女である久美に教えて貰えると知った時、最初は浮き足だっていた少年達だったが、いざ特訓に入ると浮かれた気分も吹っ飛んでしまった。
「ああ…!また的を外して!コラ!お前達はやる気があるのか!?次、的をかすりもしなかったら、私がお前達を的にするからな!」
まさしく鬼である。
少年達はすでに半泣き状態だった。
「お~、やってるやってる」
遠くからその様子を眺めていた太助は、楽しそうに笑っている。
「じゃあ、そろそろ俺達も始めるとするか」
そう、久美の砲術の稽古の後には、太助の剣術の稽古が待っていた。
「ん?どうしたんだ皆?青い顔して…」
少年達の脅えた様子に首を傾げる太助。
先に久美の特訓を受けていた者達は皆、不安そうに顔を曇らせていた。
そこでようやく理由を察した太助は、安心させるようにフッと笑う。
「大丈夫だ、安心しろ。俺は久美みたいに癇癪を起こしたりはしない」
それを聞いてホッと息をついたのもつかの間…
「よし皆、腰の刀を抜け。さっそく実戦練習を行うぞ」
その太助の一言に「は?」と、少年達は揃って間抜けな表情になる。
「せ、先生、自分達はまだ、真剣を扱ったことがなく…」
「そうか、なら初めての経験だな。おめでとう」
「ええ!?そんな、いきなり…っ」
「だいたいお前達は、腰の刀をお飾りのままにする気か?」
「そ、そんなつもりでは…」
「なら、早く刀の重さに慣れろ。木刀じゃ人を殺せない」
彼の口から出た不吉な言葉に、ヒクリと少年達の顔が強張る。
「お前達は戦場を知らないだろうが、あそこは地獄だ。先に殺るか殺られるかの世界。俺はお前達に死んで欲しくない。だから、上手い殺し方を教えてやるんだ」
と、太助は己の刀をスラリと抜いた。そしてニヤッと妖笑を浮かべる。
「さぁ、殺し合いを始めるぞ。頑張って生き残れ」
かなり手加減しているとはいえ、その情け容赦ない太助の稽古には、泣き出す者が続出した。
訓練場はもはや、阿鼻叫喚の地獄と化した。
果たして鬼はどちらか。
こうして少年達は、久美と太助の厳しい稽古の末、確実に力を付けていった。
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