ふれあい

6/7
前へ
/26ページ
次へ
稽古こそ厳しかったが、太助と久美のことを少年達は慕い、彼らはどんどん親睦を深めていった。 しかし、そんな幸せな日常も、一通の文により崩れ去る。 「正午までに城に…ね…」 少年達に送られた回し文を、太助は無表情に読み上げた。 少年達は今ここには居ない。彼らは皆各自で、家族に別れの挨拶を告げに行っているのだ。 「太助…」 久美の顔が悲しげに歪んでいる。彼女にも分かっているのだ、この文が何を意味するのか。 「あの子らも…死ななくてはならないのか…?まだ…私よりも幼い…子供…なのに…」 「それが戦争だ」 「…っ」 「だけど、まだ死ぬと決まった訳じゃない。アイツらを死なせない為にも、俺とお前で鍛えてきたんだろ?」 「……うん」 「だったらお前も、アイツらを信じてやれ」 「…うん」 子供のように何度も頷く久美を愛しく思い、太助は彼女を引き寄せた。 「たたたたすけ…!?」 「助けて?」 「ち、違…っ」 彼女は突然の出来事に驚き、顔を真っ赤に染めていた。 そんな久美の顎を肩に載せるようにして、太助はより強く抱き締める。 「久美…、そのままで聞いてくれ」 もしかしたら、これで最後になるかもしれない。 「今朝がた、殿から話があって、俺も……白虎隊について行くことになった」 瞬間、久美の頭の中は真っ白になり、その目が大きく見開かれた。 「う…そ…」 「じゃない。俺も正午になったら、白虎隊の隊長補佐官として戦地に向かう」 「そんな…!ま、待て太助!なら私が…殿…に、その命を取り止めて貰うよう…」 「馬鹿な真似はよせ。皆が命懸けで戦ってるってのに、俺だけ城に残る訳にはいかないだろ」 敵は誰一人として、会津の国に踏み入れさせない。 久美のいる、この街に。 「ここで絶対に食い止めるつもりだ」 「……っなら私も行く…!」 「馬鹿か。お前までいなくなったら城は誰が護るんだ?殿は?照姫様は?」 「…っ」 言い返す言葉も喉の奥に消え、キュッと悔しげに唇を噛む久美。その彼女の頬には、一筋の涙が伝った。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

597人が本棚に入れています
本棚に追加