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8月22日、太助と日向隊長が率いる白虎隊は、城にて殿と別れを告げた後、戦地に向けて出発した。
その日は激しい雨が降っていて、いざ戦闘と始まった、非常に困難を極めた。
一人、また一人と命を落としていく少年達。
太助はそんな中、必死に教え子達を励ました。
「へぇ、まだ生きてるのかお前達。はっ、大の大人が次々に死んでいってるってのに、大した悪運の持ち主だな。いいかお前達!最後まで、その運に見放されるなよ!」
いつもの憎まれ口を叩きながら。
それは、簡単な慰めの言葉よりもずっと、少年達の心に響いた。
先生先生と、少年達は太助を心の支えとし、戦場も死を恐れず駆け抜けていった。
そうしてしばらく経った時、山道を進む白虎隊は途中、敵の目を誤魔化す為に二手に別れた。
別れた彼らは、次の合流を約束していった。しかし、その願いも虚しく、再び全員が揃うことはなかった。
日向隊長率る班は、隊長が途中で消えるという悲運に遭い、隊長の代わりに篠田という名の少年が隊を率いた。
彼らは取りあえず、城に向かって進んだ。
そして見通しの良い場所に抜けた時、城のある方角を見て愕然とした。
燃えていたのだ。
そう、新政府軍はすでに、会津領地に進出していた。
主格である城を落とされたのなら、会津はもう終わり。少年達は激しい絶望に教われ、「敵に捕まり生き恥を晒すぐらいならば」と切腹を決めた。
しかし、本当は燃えていたのは城ではなく城下町であった。が、少年達はその事実を知ることなく永遠の眠りについたのだった。
「篠田…?」
太助は足を止め、ふいに空を眺めた。
なぜか、可愛い教え子の声が聞こえた気がしたのだ。
(気の…せい…?)
一瞬嫌な予感がしたが、頭を振ってその考えを打ち払う。
(大丈夫…だ。あっちには日向隊長がついてる…)
きっとまた再会できる。そう信じて、太助は再び歩み出した。
のちに、篠田を含む少年達の切腹の事実は、容保の心を大きく動かすこととなる。
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