しあわせ

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そしてようやく城下町に入ったものの、辺りはすでに酷い惨状で、死体の焼ける匂いに吐き気を覚えた。 「皆!もう少しだ!頑張れ!」 「はいっ…でも…」 度重なる戦闘に、少年達は体力の限界にきていた。 しかし休む間もなく、敵は次々と襲いかかってくる。 太助は、疲労困憊の少年達を守りながら、敵と剣を交え討っていった。 「せ、先生…俺達は…もうほっといていいですから…せめて貴方だけでも逃げて…くだ…」 「馬鹿言え!可愛い教え子を見捨てられるか!」 そう怒鳴りながらも、また敵を一人斬り捨てる。 確かに自分一人だけなら、逃げようと思えば逃げられる。しかし、それでは意味がないのだ。 「誰も死なせない!俺達は、生きて帰るんだ!」 城はまだ落ちてはいなかった。それはつまり、女子供が頑張ってくれていること。 そんな彼女を置いて、ここで無駄死にする訳にはいかないのだ。 それに… (久美…) もしかしたら、城に久美もいるかもしれない。 それだけが、今の太助の原動力となっていた。 「とにかく城を目指せ!追っ手は俺が片付ける!」 斬って斬って斬って、ひたすら敵を斬って。それでも、敵が数が減ることはなかった。 荒い呼吸を繰り返しながらも、太助は剣を振るったが、とうとう限界が訪れてしまった。 筋肉が麻痺して力の抜けた手から、カランと刀が地面に落ちたのだ。 「く…っ」 「先生!?」 「俺に構うな!お前達は城に走れ!早く!」 「先生を置いては行けません!」 聞き分けのない少年達に、太助はちっと舌打ちをした。 彼らを道連れにしたくはないのに。 「くそ…!」 背後から迫り来る敵。 城はもう目の前というのに、こんなところでやられてしまうのか。 そう死を覚悟したその時…   パァァン!! 突如、近くで一発の銃声が聞こえた。そして続いて、パンパンと連続で辺りに鳴り響いた。 (な…に…?) 覚悟した筈の痛みはなく。他の隊士達を見ても、誰も撃たれた形跡はない。 次に後ろを振り返れば、驚いたことに敵が皆倒れていた。 「太助ー――!!」 自分の名を呼ぶ声と共に、遠くから駆けてくる人物に目を瞠る。 心配で心配で、そして会いたくて仕方なかった… 「久美…!」 そこには、銃を手にした久美の姿があった。
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