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話終えた時の久美のポカンとした表情は、なかなか面白いものがあった。
「もちろん異論はないな?」
「っ…殿からの命なら受けるしかないだろ…!だけど!」
ビシィッと、久美は太助を指差す。
「なんでお前と一緒なんだ!それだけは御免こうむるぞ!」
「何がそんな気にくわない。お前はただ、隊士に銃の扱いを教えるだけでいいんだ。それに俺が嫌いなら、俺を無視すればいいだけだろ」
「それでも、お前が近くにいたんじゃ…私が…集中できない」
「ああ、なるほどな。俺を意識しすぎて何も手につかなくなると」
「っ…なんでそーなる!?そのめでたい頭を誰かと交換してこい!この馬鹿!!」
顔を真っ赤に染めた彼女は、上ずった声で太助を怒鳴った後、彼の側から一目散に逃げていった。
その場に一人残された太助は、深い深い溜め息をつく。
「…素直じゃないな」
素直じゃない上に可愛げもない。しかし、そんな彼女に惚れているのは紛れもなく自分。
そして彼女も、自分を好いてくれている………筈。
なんだか自信が無くなるが、これでも自分達は一応、俗でいう恋人の関係にあたる。
なのになんだ?この酷い扱いは。
普通自分の恋人を「撃ち殺す」なんて言うか?どう考えてもおかしいだろ。
自分こそ「嫁の貰い手がいない」などという暴言を彼女に吐いたくせに、自分の非は棚に上げず、太助は文句を言いながら頭を掻いた。
「ったく、仕方がないな…」
取りあえず、何だかんだで彼女には用件を伝えた。後は照姫にも事情を話して、明日から久美を借りるのみだ。
今のような調子じゃ先が思いやられるな。と苦笑しながら、彼も部屋に戻るべく庭を後にした。
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