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その瞬間!スーツの男の痛みと震えが、リアルに私に伝わってきたではないか!
あまりにリアルな感覚に、うわっ!…思わず声が出ていました。その声を聞いたのか、影がゆっくりとこちらを振り向いた
「見たな…」
低いくぐもった声で、影は呟くと、血で紅く染まった右手をこちらに伸ばしてくる。そして、影の血塗られた右手が、画面の中からすり抜けた瞬間!
バチッ!と電気のような衝撃が、私の全身に流れた!その瞬間に、テレビの画面を眺めていた自分の姿はなく、現実の私に引き戻されていた…
そして、私は金縛りに遭っていたのだ!全身をはがい締めにされたかのように、指一本動かせないどころか、声すら出ない
布団の上から、何か重い物が乗っている感覚か!?確かめようかとも思ったが、怖くて目が開けられない…
なんとか、振り解こうとしても自由は戻ってこない…それでも、意を決して渾身の力と、気合いを腹の辺りに込めた!
冗談ではなく、ピッコロ大魔王のように、気合いを言葉に乗せて!
不意に、私の体に自由が戻ってきた。だが、それでも怖くて目は開けられず、頭から布団を被って無理やり寝ようとしました
冬なのに全身に汗をかいたまま、寝るに寝れない状態で朝を迎えました
いったい、何が起こったのかも、理由がわからないまま…
そして、次の日から暫くのあいだ私は、枕元にお清めの塩を盛り、パジャマのポケットに御守りを忍ばせて眠ったのです
そんな、恐怖体験をしてから数日後、近くの現場の主任から、こんな話を聞きました
「こないだ、話してた〇〇さんやけど…仕事初めの日に、裏の池で入水自殺したらしいよ…」
私は一瞬で血の気が引きました…でも、不謹慎な話ですが、殺人でなくてホッ、とした自分もいました
あまりにも怖かったんで、この話は当時付き合っていた彼女にしか話していません…あの日の夢と金縛りは、一体なんだったんでしょうか?
今だに分かりません…でも、あれからは一度も、そういった恐怖体験は経験していません
これが私の味わった、最初で最後の恐怖体験でした
【完】
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