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『おい、起きろよ。』
フィロスは隣で寝ているガヴァルトスに声を掛けた。しかし彼はそんなフィロスの声など聞かぬていで眠りこけていた。
仕方なく彼は拳で奴の頭を殴った。鈍い音が響いた。ようやくガヴァルトスは起きて、あらかじめ用意しておいた旅に必要なものを入れたリュックを持って外に出た。
『しばらくここには戻れないな。仕方ないけど』
フィロスはため息をついた。
『でもこれからあっちの方のいろんな物を見れるのは楽しみじゃない』
ガヴァルトスはうれしくてたまらない様子だ。その場で今にも踊りだしそうな様子である。
『だがお主たち、その荷物じゃ、ちょい少なすぎるぞ』
二人のすぐ後ろでからからといった笑い声が聞こえた。
二人が驚いて振り向くとそこにはあのハボルの老人の姿があった。
『ただ心配はいらんとも。わしが全て用意してやった。孫みたいなお主らをほっとけなかったのでな。あの車に積んであるわい』
と老人は近くの一輪車を指した。
『ただあれを運ぶにはかなりの力がいりますし、僕たちには無理ですよ』
『なぁに、心配するでない。見ておれ』
老人は空に向かって口笛を吹いた。
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