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ハボルの町…………フリューゲル島の南端にあり、かつ唯一島と南にある巨大な大陸である、ゴルボロス大陸との唯一の交易場となっている。
この町は農業中心のこの島で一番の賑わいを見せている場所ではあるが、都市というにはあまりにも情けないものでもあった。
しかも、そのゴルボロス大陸の存在についてはフィロスとガヴァルトスはもちろん、フリューゲルのほとんどの人間が知らず、レメナスも『外の世界』としてあまり口に出さなかった。
つまりフリューゲルの平和は、外に対する狂気のような無関心が産み出していたものらしい。
フィロスとガヴァルトスは慣れたもので、町に入ってから迷わず町の一番の情報発信場となっている酒場『潮風の歌』へと入っていった。ただ、道を覚えていたのは実はガヴァルトスの方だけである。
フィロスは方向音痴気味……正確に言えば極端に地図に対して無関心だったのだ。
酒場は朝から酒を飲む男達以外はほぼ客はいなく、殺伐としていた。ガヴァルトスは満面の笑顔で一人一人に挨拶をしながら、周りを見回す。
彼はいつも笑顔で愛想がよく、村の大人から可愛がられていた。おまけに頭がすこぶるよいらしく、僅か9才の彼のおかげで農作業の技術がかなり発展していた。ただ本人は意識してやったようではなく、その事について聞いても上の空だった。
『あ、いたんだよね。前いたおじさん。早くいこうよ、……あと、兄さんも少しは元気だしたらどう?病気みたいにうつるよ』
ガヴァルトスは急いでその老人の近くのイスへと座った。
フィロスはガヴァルトスに完全に振り回されるていで彼の隣に座った。
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