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『うぅ、寒いよ。なんで帰り道に限ってこうなるんだろ?』
ガヴァルトスはぼやく。帰り道の途中で雨風がいきなり来襲したのだ。
『日頃の行いが悪いからじゃないのか?』
皮肉まじりにフィロスはニヤッと笑った。
骨の髄まで濡れながら2人はようやく自宅へと入った。とたんに雨風の音が嘘のように消え、暖炉の火が楽しげにはぜる音に変わった。
『あら、あんたたち。やっぱりハボルにいってたのかいな。ささ、早くこちらへきなさい。暖炉で温まれるから』
2人の母、ザナは言った。
2人がバツの悪そうな顔をしているのを見てザナは笑った。
『安心しな。お父さんはまだ寝てるから。あんたらのことは叱りはしないからさ』
2人はようやく安心して暖炉の火で体を温めることができた。
『ガヴァルトス、明日の夜に出る。それまでに準備を整えておけよ』
フィロスはこっそり震えている弟に言った。
『はいはい合点合点だよ』
ガヴァルトスは言った。了解したはいいが声がデカい。母に聞かれてはいないかとフィロスは振り返ったが雨の音で聞こえなかったようだ。
フィロスは一抹の不安を残して火に手をかざした。
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