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「……どうかしましたか?」
壇上に立つ教頭にマイク越しにそう言われたことで、ようやく気が付いた。
周りが自分を見る怪訝な目と、自分のしたことの恥ずかしさに。
「あ、えっと、すいません……」
その何とも言えない空気に、それ以上何か起こすことなど出来るわけもなく、苦笑いを浮かべながら大人しくパイプイスに腰掛けた。
私が座ったことで静まり返っていた体育館がまたざわめき始めたことに、少し安心する。
――あんな大声出しておいてアレだが、極力目立ちたくない。
悶々と後悔の念を巡らせていると、例の男がマイクを手に取ったのが見えた。
そして、口を開く。
「初めまして。萩原 京介(はぎわら きょうすけ)と言います。新任で、至らない所もあると思いますが宜しくお願いします」
ただそう言っただけなのに、周りのざわめきは大きくなり、黄色い声まで聞こえてくる。
……アイドルじゃあるまいし。皆あんな男のどこが良いんだ。
「皆さん静かに。えー、萩原先生には2年4組の副担任、それから2年生の英語の授業を担当してもらいます」
教頭がそう言えば、更にざわめきは増す。
2年生の皆は喜び、他の学年の人達は恨めしそうにこちらを見るのだ。
――あんな男が副担任なんて。
逆に変わってもらいたいくらいだってば。
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