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そのあと、親父信秀の話を真面目に聞いた。これほどまでに父親の話を真剣に聞いたことはない。
まさに衝撃的だった。
「戦にはあまり役に立たないだろうなぁ。なにせ、玉を込めるのに時間がかかる。雨の日は火薬が濡れて使えない。」
その言葉が特に印象に残った。
撃たせて欲しいと頼んだが、許しはもらえなかった。
すぐ、平手政秀が登城し、信秀と話をしたため、吉法師は、城門の前で待っていた前田犬千代に「今夜は城に泊まるのでお前も一緒に泊まるように。」と命じた。
そして、形式だけの母に挨拶に行く。相変わらず勘重郎をそばに置いていた。
勘重郎は「兄上」とも言わなかった。部屋を出ても別段腹も立たなかった。
「憧れでした。」と告白され、感激一入の犬千代とともに飯を食べた。
感無量の犬千代の話を上の空で聞いていた。
犬千代を門番の部屋に泊める様手配し、寝所に行った。
その夜は、古渡城に泊まった。
昼間に、日吉のことや町での喧嘩のことがあり、疲れていたので横になったが、父に見せてもらった鉄砲のことが気になりなかなか寝付けなかった。
夜中にこっそり武器庫へ忍び込むことを決意し、起きて支度をしていると…、何やら城下のほうがバチバチという何かが燃えるような音が聞こえた。
「敵襲か?…者共であえぃ!」
敵襲なら一刻の猶予も許されない。
天守に上り、城下を見れば火事のようだ。
吉法師は、急いで厩に降り、馬にひらりと乗ると駆け出した。
続いて犬千代が駆けてくる。
家が3軒、燃えている。幸い、家人たちは無事の様だった。
町の若者たちが年寄りの指示で、鳶を使って家を打ち壊し、鎮火させようとしている。
この家に住んでいた者たちであろうか、泣き喚くものもいた。
野次馬たちと事の成り行きを見ていると、袖を引くものが居る。振り向けば日吉だった。
「吉法師様、実は…」
「なんだ?」
「これは、火付けにござります。」
「誰がやったのか?」
「昼間、喧嘩の折、6人の者たちを倒されましたね。あの者たちです。」
「…。」
「喧嘩に負けた腹いせに、帰る途中、火を付けて行ったのです。」
「…。」
「それで、あの者たちが町の者たちに手当てをしてもらっている会話を聞いたのですが、どうも清洲のご家中の者たちらしいです。」
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