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「同じ、織田なのに、古渡と清洲は争うておる。」
信秀は遠くを見ながら続ける。
「家格は清洲が上、実力は古渡が上、乱世の縮図じゃな。」
ひとつため息をついて信秀は言った。
「ほとぼりが冷めるまで、謹慎を命ず。」
「謹慎…。」
「父として言うが、たった2騎で城門を焼いて帰ってきたお前の軍略は天晴れじゃ。」
「…。」
「先に火付けをしたのは清洲の者達との専らの噂じゃ。その報復に行ったのだな。」
「…。」
「来年は元服じゃ。後の処理は、父に任せておけ。」
「…。」
「案ずるな。清洲はお前の処分を求めてくるだろうが、あんな、”へなちょこ"野郎共の言うとおりにはならんよ。」
吉法師は答えず深々と頭を下げた。
「名古野に戻り、ゆっくりせよ。」
父の愛が分かり、吉法師は涙が出てきた。
父に涙を悟られないようにして席を立ち、犬千代を連れ名古野に帰って行った。
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