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―――死んだ。
紛れもなく、間違えようもなく、俺は、死んだ。
正確に言えば、もうすぐ死ぬんだろう。
どくどくと倒れたペットボトルのように流れでていく血はすぐに致死量に至る。それ程にこの傷は致命的。
それでもまだ生きてるのは彼女の加護があるからに過ぎない。
(まったく、どうせ死ぬなら一思いに殺してくれよ)
痛む感覚はもうない。神経が麻痺したのか。それとも、既に死んでるのか。痛みがオーバーフローして感覚機関はイカれちまった。
そんな風に自己分析出来るくらいに……時は止まったかのように緩やかに流れ。
ただ、目の前には、俺を殺した殺人鬼が、泣いていた。
――な、んで。
泣いてるのか。
わからないが、それはきっと俺のせいかもしれない。もう身体は動かないけど、言葉も出せないけど、伝えたい。
―――泣くなよ。
俺はお前に殺されたけど、恨んでないし、良かったんだ。
きっと、お前じゃなくても、俺は死んでたんだ。
だからさ、泣くなよ。
―――そうして、生きて楽しんで欲しい。
俺の分までなんて言わないからさ。勝手に楽しんでくれりゃぁいいんだ。
視界が霞んできた。
いよいよ死ぬのだ。
不思議と、心は安らいでる。
―――身体は暖かく世界は光に満ちていた――――――。
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