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こんな田舎出てってやる
それが俺らの口癖
四六時中俺とあいつはツルんでた
コンビニは22時で店を閉め
ファミレスなんかありゃしねぇ
なんにもないこの町に生まれ
なんにもない人生を過ごす
なんにもうしろに遺せないままあいつと俺のツルんだことすら?
んなもんまっぴらごめんだった
だから出て行く
こんな田舎、出てってやる
それがおれらの約束
蒸し暑いばっかの夏の夜
海にいこうと原チャリにまたがった
目の前広がる夏の海
おれらは田舎の最後の景色にした
行く宛なんてひとつもない
ただこんな田舎出てってやる
ちょっとくらい食わなくたって死にゃしない
金はないがあいつがいた
いろんなところを巡り巡った
いろんな景色を巡り巡った
先に音を上げたのは原チャリだった
旅ゆく先の海岸線
あいつの原チャがカーブで飛んだ
どこまでいってもおれらは一緒
そんな約束、脆すぎた
あいつはおれを置いてった
おれはあいつの身体を抱いて
田舎の町へひた走る
季節は奇しくも同じ夏
おれはあいつの身体を抱いて
カーブをまっすぐ突っ切った
こんな田舎で終わるのも
こいつとツルんで終わるなら
悪くはないと
ただそう、思えた。
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