『海の民リーリア』

10/21
前へ
/205ページ
次へ
  「リーリア~」 手を振りながら走って来る少女は、リーリアの白い水着とは対照的に簡単な防具が付いた戦服を着ている。 「ニーニ! どうしたの? 戦服なんか着て」 ニーニはサンナードの娘で、リーリアとは幼なじみ。 父親譲りの燃えるような赤い髪は足首までと長く、母親譲りの大きな瞳はルビーのように光る、誰から見ても可愛らしい少女だ。 「んふふ。聞いて!……お兄ちゃんが帰って来るんだって!」 もともと鼻にかかった声だが、更に甘えた感じが喜びを隠せないニーニの声。 「だから港まで迎えに行くんだぁ……って、リーリアはお兄ちゃんの事忘れちゃったんだっけ? ま、小さい頃に一緒に遊んだ仲だし会えば思い出すかもねっ」 リーリアが返事をしようとするが、ニーニの話は止まらない。 「男の子はいいよねぇ、十歳になれば神官やら神兵になる為に神学校に勉強に行けて。……私だって弓なら得意だし、華やかな仕事に就きたいよ」 確かにニーニは弓の名手、今では村長ですら敵わない。 身近な兄が神学校の寄宿舎に入ったとなれば、戦える身には羨ましい話だ。 「女の子が神殿に勤めたって貴族以外はお世話係がいいとこ……って、やだ! ずいぶん話しこんじゃった」  
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

195人が本棚に入れています
本棚に追加