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「リーリア~」
手を振りながら走って来る少女は、リーリアの白い水着とは対照的に簡単な防具が付いた戦服を着ている。
「ニーニ! どうしたの? 戦服なんか着て」
ニーニはサンナードの娘で、リーリアとは幼なじみ。
父親譲りの燃えるような赤い髪は足首までと長く、母親譲りの大きな瞳はルビーのように光る、誰から見ても可愛らしい少女だ。
「んふふ。聞いて!……お兄ちゃんが帰って来るんだって!」
もともと鼻にかかった声だが、更に甘えた感じが喜びを隠せないニーニの声。
「だから港まで迎えに行くんだぁ……って、リーリアはお兄ちゃんの事忘れちゃったんだっけ? ま、小さい頃に一緒に遊んだ仲だし会えば思い出すかもねっ」
リーリアが返事をしようとするが、ニーニの話は止まらない。
「男の子はいいよねぇ、十歳になれば神官やら神兵になる為に神学校に勉強に行けて。……私だって弓なら得意だし、華やかな仕事に就きたいよ」
確かにニーニは弓の名手、今では村長ですら敵わない。
身近な兄が神学校の寄宿舎に入ったとなれば、戦える身には羨ましい話だ。
「女の子が神殿に勤めたって貴族以外はお世話係がいいとこ……って、やだ! ずいぶん話しこんじゃった」
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