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「……ふぅ」
「どうしたんですか? ため息なんて、村長にしては珍しい」
村長と呼ばれた男は、一番大きな窓から空を見上げている。
小さな雲が浮かぶ広い空、続く海から優しい波がよせる白い砂浜、村の民達の明るい笑い声。
すべてを潮風が包んでいる、海に生きるコーシュ・ワイト族の平和な村。
コーシュ・ワイト族は寿命こそ他の種族と変わりないものの、三十代半ばで肉体の老化が止まるといった特徴がある。
村長も百を越える歳でありながら、逞しい青年の姿のままだった。
権力者の象徴である長い髪を、邪魔そうに掴みながら振り返る。
「いやなに、神殿から文使いの鳥が来てのぅ」
「何か大変な事でも?」
村長は即答せず、ひと呼吸置いてから早口で喋りだした。
「大変もなにも、神殿とは言え毎回毎回あんな大きな鷲を文使いにする事はないと思うんじゃ!」
長老は突然声を荒げて、執務机に抱きついた。
「見てみぃ、私の大事な机がアイツの爪でボロボロじゃ~!」
村長は机に抱きついたまま、泣きだした。
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