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重い沈黙が続く中、村長が口を開こうとした次の瞬間。突然ドアが開け放たれ、潮風と共に勢いよく少女が駆けこんで来た。
「おじいちゃん!」
「こ、これリーリア!」
少女は濡れた髪から水滴を飛ばしながら、村長に抱きついた。
途端に村長の表情が柔らかくなる。
「まぁた海に潜っとったのか。濡れたままにして手入れを怠ると、潮でボロボロになってしまうぞリーリア」
「え~」
面倒くさそうに返事をする少女の名はリーリア、今年十六になったばかりだ。
長老は抱きついているリーリアを一度両腕で抱きしめると離し、優しく肩に手を置いた。
「コーシュ・ワイト族ならではの美しい金の髪じゃ、大事にしておくれ」
納得のいかない表情ではあったが、リーリアはうなずいた。
「それより見て! 新しいお宝見つけたの。コーシュ様の像の下って、お宝だらけなんだから」
海に浮かぶ祖先の像の辺りは潮の流れが集まって、色んな物が流れついてくる。
リーリアが嬉しそうに握っていた手のひらを開いてみせると、まだ濡れてキラキラと光る赤い石が。
よほど強く握っていたのか手には痕が残っていた。
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