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村長はリーリアの手から赤い石をつまみ、太陽にかざす。
「……ローズカイトじゃな。波にもまれて丸くなっとるが、カットすれば高く売れるぞ。ちと小さいがの」
「やったぁ」
リーリアは満面の笑みを浮かべ、村長から石を受け取ると腰に下げていた巾着の奥へいそいそとしまいこんだ。
その様子を見守る村長の前に割り込むと、サンナードはリーリアの顔の位置までしゃがみこんだ。
「リーリア、記憶の方はどうだい?」
「……まだ、何も」
「何も?」
「う、うん」
リーリアとサンナードのやり取りを、眉間に皺をよせ心配そうに見つめる村長。
リーリアはそれに気付くと少し慌てて、体の前で大きく手を広げてみせた。
「大丈夫だよ、そんなに心配しなくっても。忘れたのは昔の事だけだし、不便な事なんてないから」
リーリアには生まれてから十四歳までの記憶がない。
十四歳を迎えた年、原因不明の高熱を出して倒れた後……記憶を失ってしまったのだ。
「大好きな村のみんなを忘れたりしなくて、本当に良かったって思ってるんだから」
大丈夫、とクルリと回ると髪や水着から滴る水がキラキラと光って落ちた。
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