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「リーリア。何か思い出した時は、私かサンナードにすぐ知らせるんじゃよ」
「おじいちゃんたら心配性なんだから。そんな嬉しい時は、大騒ぎしてみんなに知らせるよ?」
「……そうじゃの」
笑ってはみせたが、村長の心の中は穏やかではなかった。
「あっ」
突然リーリアが思い出したように声をあげる。
「いっけない。ルーマとトーマを待たせたままだったんだ」
「ルーマとトーマ? あんのいたずら妖精、また来とるのか! 大体森の女王試験も近いというのに……」
また村長の文句が始まった、と出て行こうとするリーリアにサンナードが声をかけた。
「リーリア! うちのニーニに会ったらアトラスが帰るのは明後日だって伝えてくれないか。明日と勘違いしてるんだ」
「アトラス?……あ、ニーニのお兄さんか。はいっ」
リーリアは元気に返事をすると、ドアから再び潮風の中へ走って行く。
「……リーリアの記憶。そして神石が戻るまで、どれ位の猶予があるのかは私にもわからん。しかし、兆しが表れたならそう遠くはあるまい」
村長とサンナードは視線を足元に落とすと、ぐっと握った拳に力を込める。
「村長……リーリアは、私と妻にとってアトラスやニーニと何ひとつ変わらない。血の繋がった家族のような存在なんです」
音がしそうなほど、悔しそうに唇を噛むサンナード。
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