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その左肩に村長は力強く手を置く。
その手は長い歴史を物語る、大小様々な無数の傷で覆われていた。
「それは私も。いや、村の皆にとって同じ事。リーリアに辛い思いはさせたくない。しかし、神石が戻ってしまった時にはサンナード……頼んだぞ」
二人の目に、堅い決意の色が浮かぶ。
「わかっています」
理解はしているが、それでも何か言いたげなサンナードの瞳。
その視線を遮るかのように肩に乗せていた手を顔の前に持ってくると、一瞬止めて、そのまま下ろし窓際へ歩き出した。
「私はよい。絶対とは言えんが……過去の文献によれば、その方法なら何とかなるかも知れん。リーリアだけでなく、村民のためにも、何もしないよりはマシじゃろう?」
窓の外、カモメの鳴き声に……白い砂浜を走り回る子供達。
漁に使う網を片付けている女達、時折強く吹く潮風に髪を任せながら、二人は暫く海を眺めていた。
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