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一方、村長の部屋から退散したリーリアは村の出口に向かって走っていた。
「ルーマとトーマ、大丈夫かな? 短気だから怒ってるかも」
出口が見えかけた時に小さな羽音がふたつ、全速力でリーリアに向かって来るのがわかった。
「ひっ……!」
驚いたリーリアは目を閉じ、両腕で顔をかばう。
「遅いよ! リーリアってば遅いよ!」
「ホントだよ、待ちくたびれたよ!」
羽音の正体は近くの森に住む妖精の姉妹、ルーマとトーマ。
リーリアの手のひらほどの身長でサイドを長くしたおかっぱ頭。
人間から見ると双子に見えるが、よく見ると姉のルーマはつり目、妹のトーマはたれ目である。
「ルーマもトーマもごめんっ。さっきのお宝見せたかったから……でも、何かそれだけじゃ済まなくって」
リーリアの耳の近くで小さな風が行ったり来たりしていたが、左右から目の前に飛んで来て止まった。
「それだけで済んじゃダメなのよ!」
「ちゃんと聞いて来たんでしょうね!」
妖精と言えば小さくて見た目は可愛らしいが、この二人は揃って気が強く、更に口が悪い。
「こ、これローズカイトだって。小さいけど高く売れるみたい」
リーリアは巾着から赤い石を取り出して見せた。
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