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私は小さなケーキ屋で働いている。
ある日のこと、ふと外を見ると私と同年代ぐらいの若い男の人が店の前にたっている。
その日は何も買わないで帰っていった。
二日後、再びあの男が現れた。
その男はジッと私の顔を見つめていた。
そして一言「このショートケーキ、下さい」と呟いた。
しかしまだ私の顔を寂しそうな目で見てくる。
ケーキを受け取った彼は静かに去って行った…
お釣りを忘れて…
「ピチャッ…ピチャピチャ……ザー…」
雨が降ってきた。
そういえばさっきの人は傘をもっていなかったな…
彼はこの大雨の中ショートケーキを一つだけ持って傘もささずに何処へ行ったのだろうか。
まだそれほど遠くへは行ってないだろう。
私は傘を差し、もう一本の傘とお釣りを持って店を出た。
十分後、彼を見つけたのは近くの墓地だった。
一つの墓の前にしゃがみこんでいる。
何か墓石に向かって話しかけているようだ。
「なかなか来れなくてゴメンなぁ…彩加ショートケーキ好きだったろ?買ってきたんだけど…これもグシャグシャになっちゃったな…」
そう言って彼は微笑みかけていたが、その笑顔にもやはり少し寂しさがにじんでいる。
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