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「それじゃ、とりあえず僕の家に行こうよ」
「…お邪魔したら悪いよ」
クレスタの提案にカルスは目をそらす。
どこか安心感を感じはする、この人は悪い事はない、なんとなくそんな気がしつつも、そもそも人間と関わることの無かったカルスは今一つクレスタを信用しきれず、わずかに警戒していた。とはいえ、そもそもお互いに子供であるから警戒心などあって無い様なものだが。
そんな警戒を感じ取ったクレスタは笑顔を浮かべた。
「お腹、空いたでしょ?朝ご飯、用意してあげるよ?」
その言葉にカルスは思わずお腹を押さえ、さらに目をそらした。
あからさまなそんな様子にクレスタは笑みを深め、カルスを抱えて歩きだす。
「遠慮しなくていいから、行こう?」
「わわっ!?い、行くから!自分で歩くから!」
「まぁまぁ、カルス疲れてるだろうからさ」
カルスは恥ずかしいのか、暴れてクレスタの腕から逃れようとするが、クレスタはしっかりと抱えて離さず、ニコリと笑みを浮かべた。
「~~~~っ!」
そのまぶしい笑顔になぜかどきっとしてしまい、カルスは何も言い返せなくなってしまった。
それからは一言も話すことなく大人しく抱えられたまま、森の中を進んでいった。
しばらく進むと、前方に大きな屋敷が見えてきた。
クレスタはカルスを抱えたまま、真っ直ぐ屋敷に向かっていく。
「到着。ここが僕の家だよ」
「大きい…割に、人の臭いが全然しないけど…?」
カルスは僅かな警戒心を復活させ、眉間にシワを寄せる。
「…うん、僕、一人暮らしだからね」
クレスタが足を止めて静かに言った。
その声にはっとしてクレスタの顔を覗き込む。
クレスタは、屋敷を眺め、哀しそうな笑顔を浮かべていた。
「…一人、って…お父さんとお母さん…は…?」
「死んじゃったよ」
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