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その日、私はいつもの通り悠の家に来ていた。
悠が楽しそうにゲームをしている中、私は話しを切り出した。
「ねぇ、悠。ちょっと話したい事があるんだけど…。」
「ん?何だよ、話したい事って。」
悠がゲームを中断し、私の方を見る。
私は深く深呼吸をして、口をひらいた。
「ねぇ、悠。…私たち、もう別れよ。」
部屋の中の時間が一瞬止まる。
と、次の瞬間、悠が私の肩を掴み、戸惑いを含んだ声で言った。
「何…で、何でだよ、蛍(ほたる)。」
「ゴメン…、悠。もう私は貴方についていけないの。」
私は悠から目を反らす。
そんな私を見て、悠の声は戸惑いから徐々に怒気を含んだものへと変わっていった。
「もしかして俺よりも好きな奴ができたのか?許さねぇ…。蛍は俺のモンだ!」 「違う!違うの、悠。悠の束縛には私はもう耐えられない!!お願いだから、別れて…。…別れて…下さい…。」
『別れて。』私が放った残酷な一言。
たった一言だったけれど、壊れかけていた悠を壊すには十分すぎた。
悠は、泣いている私から手を離すと、その手で自分の顔を覆った。
私は悠も泣いているのだと思い、彼の方へ手をのばす。
「悠……。」
「ふ…ふふ…あはははは!」
突然の笑い声。
驚いた私は、のばしかけていた手をひっこめた。
悠にいつもと違う雰囲気を感じたからだ。
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