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悠はしばらく笑うと、笑うのを止め、私の方を向いた。
その表情はいつもと変わらず優しいが、目だけはいつもと違い、妖しくギラギラとしている。
「蛍、俺、いいこと思いついちゃった。」
そう言うと、悠は台所から包丁を抜き取り、私に微笑んだ。
「な…、何する…の…?」 恐怖で声が震える。
悠は、包丁をウットリとした表情で触りながら、今までにないほどの猫なで声で私に言った。
「蛍…、俺はね、蛍が大好きだよ。愛してるんだ。…だからね、俺達が一緒にいるにはもうこうするしかないんだよ。」
「嫌…、いや……。」
「ねぇ蛍、こっちにおいで。」
悠が私に手を伸ばす。
「嫌あぁぁぁ!!」
バンッ
私は悠の手を振り払い、全速力で逃げ出した。
後ろからは悠の笑い声が聞こえてきたが、私はただひたすらに走った。
ハァ…ハァ…ハァ…
(逃げなきゃ。悠から、少しでも遠くへ!)
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