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そうして、ボールが落下する前になんとか追いついた。さらに一度、ポンと軽く蹴り上げて、再びオデコに乗せている。
きっと、「普通の頭をしている者」同士でなら、ハールムゥトはこの競技でメチャクチャ強かったはずだ。ノーハンドでのボールの維持も巧みである。
だけども。
「器用じゃねぇかあ。いつまでも、もつかなぁ?」
今は距離が開いたゴッドヘッドは、余裕綽綽といった顔。たぶん奴は、バランスボール限定で本物の魔王よりも強そうだ。あんなん、ちょっとやそっと体を押した程度じゃボールが落ちそうもないぜ。
度しがたくアンフェアな戦況を見て、セイの憤慨した声調。
「なんだこの競技ッ。いわゆる無理ゲーではないか! おいこら、うんえーい!」
いわゆる意味不明なことを言いながら運営であるゴーレムガールに抗議した。
向こうにいる彼女は大きな肩を揺らして、
『異議は認めませーん。バランスボールで涙を飲んだチームは他にもいまーす』
にべもない返答。
「なるほど、なのです」
セイの横に立つシャムリーロッテが、無表情ながら得心したように言っている。
「これ、《黒星》を前提にした種目というわけですの」
「なんだって、そんな」
「単に、盛り上げるためでしょう。ゴーレムレースの映像記録は、王都の活動写真展で公開されますので。このトライアルも、勝ったり負けたりの方が観客も喜びますの」
んな殺生な。
そのようにイヤな裏事情を聞かされてしまうと、リングで健気にボールを維持し続けているハルがあまりにもかわいそうである。
と、俺が思った三十秒後には勝負が決していた。
★ ★ ★
――ハールムゥトの勝ちである。
順序良く行くと、まず、ハルは額でボールをコロコロして、空を眺めるように、こんなことを言い出したのだ。
「あのぅー?」
誰にあてたともわからない声だったが、
「ボールに、手で触れなければ良いんですよね?」
質問の形式に、返答したのはゴーレムガールである。
『はい、そーでーす。先ほどのように脚でボールを移動させるのは問題ありませーん』
それを聞いた時に、ハルの上向き顔はとっても明るい笑顔に変貌し、ボールを乗せたまま両手を「パチン」と合わせたのである。
「なるほどっ。わかっちゃいました!」
「ああーん?」
ハルの明るい反応に、ゴッドヘッドが怪訝そうな顔を浮かべた……
瞬間!
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