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――パァアアンッ!!
裂音。風船が割れるような音が上がった。
次。その場で、華麗に脚を垂直に振り上げていたハルの姿が空間に固定されていたのである。
ボールは消えていた。
いや。
遥か、とてつもなく遥か上空に、ボールは蹴り上げられていたのだ。
「なぁッ!?」
滞空時間で言えば数十秒ほど優にありそうな、快晴に浮かぶ星となったボールを誰もが仰いだ。
ちなみに俺は上空のボールをチラ見した程度である。それよか、足を高く上げたポーズがなんかエロくて良いなー、という極めて不純な動機のもとで、ハルに視線が釘付けだったわけなのさ。
それゆえ、次なる展開も目撃することになった。
とんでもない位置に上昇したボールを例外なく呆然と眺めていたゴッドヘッド。
そして、ハールムゥトは態勢を戻すと、一瞬のうちに奴へと疾駆して懐に入っていた。
身近に迫った気配にゴッドヘッドが気付いたような顔をして……
彼女のがずっと速い。
自らも高く、跳んでいた。
「せぁッ!」
パァンッ!! と、再度。
二メートルの長身のてっぺんに乗せられていた相手ボールだけを、正確に蹴り飛ばしていたのである。
そのジャンピングショットは、奴のボールをリングの遥か向こうに弾き飛ばしていた。
タァン、タンと。地面をかすめて、ずっと遠くへ転がってゆく。
ボールが、地に着いた。
「……………あ、」
ハルが着地した頃に、ようやくゴッドヘッドは、事態が飲み込めたような顔。
中身を無くした鳥の巣を抱えた。
「アアアアアアアア!?」
最後に、ゆっくり空中散歩を楽しんでから落下してきた自分のボールを、ハルが器用に頭で受け止める。
はにかむように、言ったのである。
「こーゆーのも、ありってことですよね?」
以上。
勝負を決した三十秒間の始終だった。
ギャラリーの誰もが反応しない、長い沈黙を挟み、
『…………しょ』
やがて一足早く忘我から立ち直ったゴーレムガールの声が響き渡る。
『勝者、ハールムゥト選手!!』
聞いた瞬間には俺も、
「よっ、しゃあ……」
ガラにもなくガッツポーズしてしまったではないか。
「やりましたの」
クールだが、魔女も驚いたように目を丸くしている。
ジュードも、これは痛快!と言った感じで腕組み笑っていた。
「やるもんだなぁ! 今、ボール、何十メーター上がったか!」
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