第四話

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   出来レースで敗北してしまったゴッドヘッドは、鳥の巣ヘアーをワシャワシャしながら叫んでいる。 「う、嘘だぁああああッ! このオレが、バランスボールで負けるなんてっ!?」  まあ、お前のためだけにあるような競技だったしな。そりゃショックも大きかろう。  やがて。  圧倒的に不利な状況を覆して、凱旋する天誅戦隊のスーパーヒロインは、やんややんやと喜びまくっている俺たちの様子に、ちょっと照れくさそうな顔をしながらリングを降りてきた。  なんつーか、俺も、単純なのな。  予想外であった勝負の行く末に、興奮しているからかもしれない。 「クロンさん、勝っちゃいました」  晴れやかなあいつと最初にハイタッチを交わしたってだけで、ちょっぴり嬉しかったり誇らしかったりするのだ。    ★ ★ ★  …………  ……  第二戦。 「うわぁ……ハル姉さんのあととか、すっごいやりづらいし」  そんなことをボヤきながら、アルトはリングへと上がっていく。  少年が吐いた直前の台詞のためか、必要もないのに申し訳なさそうな顔しているハルが、 「ア、アルトさん! ファイトですっ。ちょっと無理そうでも、なせばなるものですっ」  ハルが特殊すぎるせいで説得力があるのかないのかイマイチ判断が難しい。さっきの試合は彼女だから成し得た大金星だろう。  そのためアルトの返事にも、 「がんばるー」  やる気を感じねー。  アイツの気持ちがわからなくもない。俺と同じく比較的イッパンピープルに分類されそうな男の子なのだから、ハールムゥトにあんな勝ち方をされたあとではやりにくくて仕方ないだろう。かくいう俺も、ジュードの後なのだから他人事ではない。 「アルト、俺は理解者だ。無理せず負けていいぞ」 「…………」  なにも中指を立てることはないじゃないか。  まあ、あの様子からして緊張とか不安に心身が侵されている気配は感じない。冷静沈着と言えば聞こえは良いが、それよりも端的に「冷めている」と表した方がニュアンスもよく伝わると思う。  無茶してまで勝とうとはしないだろ。  それならそれで俺は良いと思う。怪我なんてされるのが一番寝覚めに悪いからな。  少年がバトルリングに登場を果たすと、円滑な進行に傾倒しているらしきゴーレムガールが快活に実況を始めた。 『第二戦の種目を発表しまーす!』  
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