第四話

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   直後には、そこのジュードが渋い声を漏らしている。 「おいおい」  アルトは、運動音痴なのか?  球が遅いのはともかく、まったくひどいコースだ。投げられたボールはハルザックのどの部分にもかすりそうにない、どころか軌道が低すぎて、奴に届く前には地面にぶつかるだろう。  相手も、これには嘲笑するより他はないようだ。 「どこに投げているッ!」  仁王立ちをして、アルトの暴投に動く気もないようだ。  投げられた青球が、ハルザックのかなり手前の陣地に着弾。  バウンドしてきた青いボールを、相手は児戯のように片手で掴む。その表情はさらに嘲りの色を深くした。  そして、 『青球を捕球ミス! ハルザック選手マイナス1ポイント!』 「なにぃいいいッ!?」  ゴーレムガールの審判に思いっきり驚愕している。  アルトは済ました顔で、 「こういうルールなんでしょ?」  あ、なるほど。  俺も「回避してはいけない」という説明のせいで考えてもなかったが。  それ以前に青球は「自陣に進入した場合に必ず捕球しなければいけない」ルールだったのである。  つまり、青球は相手に当てるためのボールではないということなのだ。   敵陣地に落としてポイントを奪うのである。 「我はそんなルール知らぬぞ!」 『98傑集は事前にルール概要を知らされてるでしょー。内容を深く考えないからそーゆーことになるんでーす』 「むむむむむぅッ!」  なんだか、運営陣と98傑集の間にも壁があるようだ。痛憤ままならぬ顔をハルザックが浮かべている。  なにはともあれ。  これでアルトも1ポイントをあっさり返した。 「じゃ、約束どーり、僕の勝ちってことでー」 「待て待てーい! さっきの話はナシだ! 競技の原則を変えてはいけない」  正当化されてしまった。  自分の発言に責任を持たない悪魔の言葉に、アルトは心底めんどくさそうな声を上げる。 「うそつき」  言いながらも、予想通りだったのか、暑くなったのか、上着を一枚脱いで身軽な臨戦態勢に変身している。  ハルザックについては、開き直った様子だ。 「なんとでも言うが良い。お前も小賢しいようだが、最後に勝つのは我!」  競技は続行の方向。  そうすると、確かに、ハルザックの言う通りではある。奴もこれで青球が二つ。つまりアルトのライフをゼロにできる数だった。  再び、少年が不利になったと思える戦況。
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