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第三戦の内容は《グラディエーター》。
古代の剣闘士を差すその競技を聞いた時、「俺様のクジ運もまんざらじゃねーな」と笑っていたほど、究極にジュード向け競技であった。
つまりは純粋な決闘。
よし、これは期待できるだろ、と俺がワクワクにも似た心境を抱いた次の瞬間には、うん、勝っていた。
リング上に騎士が昇ってきたあたりから、どうにも相手アクマの表情が翳っていて、
「え? マジ。ジュード・エイゼリオス? あの、鉄砲玉も馬鹿笑いして両断するとか、落星をこれまた馬鹿笑いしながら片手で受け止めたっていう? 無理無理。ギブアップ。うわぁ、オレって運が悪いな、絶対。今朝の弁当も周りより肉の量が少なかった気がするし」
と、な。
マッチョな悪魔が愚痴をイジイジと漏らし、完全に戦意を喪失してしまった模様だ。騎士であり貴族でもあるジュードの名は悪魔たちの界隈でも噂になっているらしい。ただ、落ち星を止めたってのは流石に眉唾にしか思えないのだが。まあ、弾丸あたりは確かに両断しちゃいそうではある。
相手は試合放棄を宣言し、一方ではバトルをさせてもらえなかった騎士は往生際が悪い。
「わかったぁッ! 俺様は左腕一本で」
『うっさい! コルド選手の試合放棄により勝者はジュード選手! さっさと降りてくださーい。駄々こねると踏み潰しまーす。五秒以内。5、4……』
「やるせねぇ!」
俺としてもジュードの勇ましい姿は是非とも拝みたかったと思うのだが、これほど平和的な終結ならば何よりの僥倖であろう。
三勝目は最速でもたらされた。
「ま、向こうも所詮は有志の集まりですし。バカのバカな噂も、たまには役に立ちますのね」
憮然とした顔でリングを退場してくる騎士を、気分良さげに眺めているのはシャムリーロッテ。彼女の笑顔はやがて、俺へと向いてくる。
「残すところは二勝。このまま、期待していいのかしら――クロン」
そうである。
『それでわ、チーム天誅……四番手のかたーッ!』
三戦目が一瞬で決着してしまったため、当たり前だが、一瞬にして、俺の出番になってしまったわけだ。
なるようになる、て言葉は嫌いじゃないが、どうだろう。これまでの試合の様子を見る分には俺が勝てそうな種目が一つも無かったことが不安の種である。
まあ、ガーデニング対決かもわからんし、とりあえず、俺はリングへと向う。
【第四話】...終了
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