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たとえ、みっともなかろうが遮二無二、勝ちに行ってやるよ。
『ま、か、せ、ろ! いやぁん、クロン選手やる気満々だぁー! オバサンちょっとドキーンとしちゃったじゃなーい!』
オバサンて。嬉しいけども、あいにく普段の俺はこんなんじゃないですよ。今はちょっとテンションが上がってしまっただけだ。で、彼女の本体は一体どこにいるんだろう? やたら声が可愛いから一回実物を見てみたいんだけども。
さておき、若々しい声帯を持つオバちゃんゴーレムが発表を始める。
『そんなクロン選手にチャレンジしてもらうのわぁ!』
常時テンションの高いゴーレムガールはゴツいコブシを天空に突き上げた。
『“ソリタリー、アイランド!”』
孤島。
そうと言われても競技内容が想像できなかったが、聞いてみると実に単純明快な種目であった。
『この競技のルールはただひとーつ! 対戦相手をリングの外へ追い出すことだけでーす!』
いかにも力がものを言いそうな競技である。
『そしてー! 第四戦でクロン選手と戦っていただく98傑集わー、セルゲイ選手!』
そうして、リングの上に現れたのは、もはや98傑集が無個性に見えてしょうがないほど、今まで通りの大男なのだ。
笑い方的には「グヒヒヒ」とか似合いそうな? 配慮して個性を見出してやれば、重量感たっぷりの、でっぷりとした丸い身体を揺り動かしながらやってきて、不愉快にも俺を見てニタニタと笑っている。
そして、
「ぐひ」
……俺の勘も冴えてるね。
肥大漢である悪魔が嬉しそうにグヒと漏らした理由は、
「エイゼリオスの騎士じゃなくて超ラッキィ。よわそう」
うん。俺を見た目で判断するのは正しいな。
喧嘩の腕はからっきしだぞ。
『クロン選手ー、ルールについて何かご質問はありますかー?』
「あ、魔術とかアリ?」
『アリですがー、ここから見て、手首にマジックライセンスが確認できませーん』
「やっぱ、忘れてくれ」
残念がった俺が手を振ったところで、チャリーン、と、地面で金属的な音が上がった。
足元を見ると、銀色のブレスレットが落ちている。
俺は振り返った。
どうやら、シャムリーロッテが投げてくれたらしい。ここからじゃトンガリ帽子に隠れて表情が見えないが、たぶん洒脱な薄ら笑いの顔であろう、彼女は手をヒラヒラさせていた。
俺も手を挙げて礼を表すと、ブレスレットを手首に通す。
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