第五話

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   そこまでのやり取りを眺めていたゴーレムガールは納得したように頷く。 『ああ、そういやシャムは代行資格持ってたもんね。はーい、オーケーでーす。クロン選手のマジックライセンスは確認しましたー!』  これでなんとか俺も、ただの冴えない男から脱却できただろう。一般人から三流魔導師にランクアップなのだ。  何かされる前に炎の鳥で焼いてやるぜ。 『ひとーつ! 術名リストは割愛しますが殺傷レベルがBを超えている術およびリストに無い創作魔術を使用した場合は失格と見なされるのでご注意くださーい!』  え? 殺傷レベルって何? 聞いたことないんだけど。  俺がそのリストとかいう物の提示を願うと、 『メンドーなのでイヤでーす』  なんというか。 『殺傷レベルAの魔術だけで一体いくつあると思ってるんですかー。まあ、簡単に言えば殺傷力皆無の術でーす。攻撃を目的としない、いわゆる《便利魔術》と呼ばれるほとんどがレベルAだと思ってくださーい』 「……りょーかい」  なんとなくは把握した。しかし、正確な線引きがわからないと、下手に魔術は使えないな。少なくとも攻撃魔術を使って勝利を収めることは認められないらしい。  まあ、便利系統の魔術が使えるだけでも幸いか。  俺とゴーレムガールのやりとりを聞いていた丸い身体のセルゲイが、巨体を震わせて笑っている。 「ぐひ。おまえぇ、魔導師かぁ? でも、よわそうだなぁ」  ヨワソーヨワソーうるせぇな。さすがにイラつくぞ。  しかし、98傑集の悪魔皆様も仕事上しかたなくイヤな奴を演じてるのかもしれず、ガレットくんにオタマで殴り倒されたりとかいろいろ大変そうなので、俺はムカっとした気分を抑えた。勝負事で苛立っても良い結果を生まないとはよく聞くし。ジュード風に言えば俺様はクールな男。  にしても。と、セルゲイ選手のことをよくよく観察してみる。  肉の量が違う。  たとえ俺が全力疾走で突進していっても、たぶんビクともしなさそうな体付きをしていやがる。真っ向勝負じゃ絶望的だな。  さて、まずは詠唱しながら、どうやって勝利を挙げようか俺が考え始めたところで、 『それでは、第四戦スッタァト!』  さっさと火蓋が切られてしまった。 「ひひぃ!」  言っちゃ悪いがオツムの弱そうな声を上げながら、開始と同時にセルゲイが走ってくる。
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