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その少女は必死に何かを伝えようとするが、ボソボソと蚊の羽のような小さい声で話すので、仕方なくオレは耳を傾けてやった。
「人が有り難い話してるのに溜め息するなんて、アンタ、サイテーね」
いたっ!! あんな話を真面目に聞くようなやつが……いた~~!!
大事な事だから2回言ったんだぞ? もう一回言おうか? いや、辞めておこう。
「すまん」
オレの謝罪にも耳を貸さず、謎の美少女は真面目に聞くようにオレを促した。
いや、実際は促してなどいない。その勝ち気な鋭い目がオレを脅している。
これが殺気ってやつか……オレの体中から冷や汗が滝のように流れ落ちていく。
錯覚かわからんが、少女の背後に悪魔が見えた。
とりあえず、オレは前にむき直して校長先生のありがたい話を存分に聞かされるハメになった。
実際はずっと少女に脅えていたため、耳を傾ける余裕など蚊の羽のほどもなかったけど。
入学式を死に怯えながら迎えるようなやつなど、この世には大抵いないだろう。
もしいるならオレは心の底から会いたい。ソイツとは人生の友になれるはずだ。
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