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「武お疲れぇ。」
「お!純か。」
夕暮れのグラウンド
私と武は其処にいる。
武の方はずっとバットを降り続けているが、私は何もしない。
でも、この雰囲気が好き。
「ねえ、武?」
区切りの良い所まで来たのだろう。
私の横にある真っ白いタオルを取りに来た。
それで汗を拭きながら何だ?と(無駄に)爽やかに聞いてくる。
「なんでそんなに頑張るの?」
さすがにこの質問は驚いたようだ。
ハハッと困ったように笑いながら頭をかいた。
「俺バカじゃん?」
「知ってる。」
「だから難しい言葉とか知らねえけど、これだけは言える。」
「…好きだから。」
何時もの爽やかな笑顔じゃなく、真剣な眼差し。
私の心臓が暴れてる。
私に好きだと言った訳ではないのに。
てか、これじゃ私が武に好きだと言って貰いたいみたいじゃないか。
「そう、なんだ。」
「おう!俺、好きな事には全力で行くからさ、覚悟しておけよ?」
「…はい?」
ニカッと効果音が付きそうな程の笑顔を浮かべた。
「だからこれは宣戦布告だぜ?」
……………。
私は震える手で先程キスされた頬を触った。
「絶対お前を惚れさせっから!」
そう言って武は笑う。
「…ちくしょ。」
この勝負、私のKO負けだよ。
勝てる訳ない。
だって、勝負は始まる前から着いていたのだから。
=end=
似非武だ似非武。
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