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「聞き方を間違えたな……」と、知香が言い訳を考えていると、
「貴方、迷子かしら?」
「へ?」
「うちの屋敷で、迷子になってらっしゃるのね」
「は、はぁ、まぁ……」
「まあ、それは難儀ですわね。……どちらへ行きたいのかしら?」
「えっ、えと……写宮くんのお部屋に……」
「まあ! 嵐のお部屋?」
「へっ……? 『嵐』?」
「とすると貴方は、“桜井 知香ちゃん”ねっ?」
「あっ……あ、はい……」
知香が戸惑った気味にそう答えると、その女性は嬉しそうな様子で、
「まあまあっ。初めてお会いできたわ。私、嬉しい! ねえ! 今お暇かしら? 良ければ少しお話いただけませんこと?」
と言って、返事を聞く前に、もう知香の手を引いている。
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