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「じゃっ、じゃあ、写宮っ……嵐くんを産んだのは……?」
「16の時でしてね」
はい──────!?
「ふふっ。そんな驚いた顔をなさらないで」
「いや……ぜぇんぜん、おどろいてなんかいませんよ……ははっ……ははははっ……」
乾いた笑いを漏らす知香を、華江はさらに愉快そうに眺める。
「私、元は茶道の家元の跡取り娘でしてね。婿養子をもらって、跡を継がねばならなかったのですね」
「は、はぁ……」
「けれど、今の夫……嵐のお父様と恋に落ちてしまったものですから、“結井野”ではなくなってしまったのです」
「え……。でもさっき、『第九代家元』って……」
「うふふっ。はい、ですから……家元のつもり……とでも言いましょうか。母は認めておりませんから、家の実質的な家元は、今も母なんですのよ」
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