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そう言って、照れくさそうに髪をかき上げる華江には、家を裏切ったワガママお嬢様の影はなく、普通の一母親にしか見えない。
「いいことですよね」
知香も、なんだか暖かい気持ちで微笑んだ。
「ええ、本当」
二人は、それは穏やかな気分で笑い合った。
知香はなんだか涙が出そうで、それを必死に笑顔でごまかした。
ダッ ダッ ダッ ダッ……。
「ん?」
「なにかしら?」
突然、ローカを大慌てで通るような足音が聞こえ、知香と華江は襖の方を振り返った。
バンッ!
「ほんとにいたよ!」
「写宮くん!?」
荒々しく襖を開け、肩で息をするのは写宮だった。
「なにやってるの?」
「それはコッチのセリフだよ! なに、トイレ行ったまま帰ってこないから、どっかで変なヤツに捕まってんのかと……」
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