オタクになろう!

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  「ただ……? なに?」 「写宮くんは、どれくらいオタク度高いのかなぁ、と思って」 「そんなん今さらだろぉ、桜井ちゃん。かなりだよ」 それまで黙っていた柳が口を挟む。 写宮は、ちっと軽く舌打ちし、二人から視線をそらした。 「小説の文、暗記してたりするの?」 「あー、できるできる。嵐。やってみせろよ」 たいそう愉快そうに言って、柳はシャーペンをくるくる回す。 写宮はハアッと息を吐くと、ゆっくりと口を開いた。 「百合は言った。どうして、こんなことに。孝之はそんな百合から辛そうに視線をそらし、仕方のないことだったんだ。それより早く警察を呼ぼう。待って、私たちの責任かもしれないのよ。だからどうしたんだ。今大切なのは、一刻も早くこの死体を片付けることだろう。貴方……っ、そんな言い方。ひどすぎるわ。君こそ、なにをそんなにビクビクしている? もっと堂々とすべきだ。だって、だって……、子どもよ、子ども。私たちの子どもなのに……。なのに……。僕たちの子どもだからこそ、僕たちが最後まで面倒を見てやらなきゃいけないだろう? 亡くなってしまったこの子のためにも……。そう言うと孝之は、息子の遺体をひょいと抱き上げた。百合は、言いようのない違和感を感じた……」  
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