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「私はただ……、嵐様のような美しい方に仕えるには、自分自身も美しくなければと……」
「…………」
土山は、バツが悪そうに言葉を紡ぐ。
写宮は、黙ってその後ろ姿を眺めた。
「こんなっ……」
土山の声が揺らぐ。
「こんな老いぼれのクソじじいなのですから、せめて体くらいスマートなままでいなければと思って……」
おいおいと滝のような涙を流す土山に、三人はやれやれといった顔だ。
「土山」
写宮の声が響く。
「はい……」
「僕はさ。土山を信頼してるし、実のお祖父さま以上に好きだ。だから、土山が太ってようが痩せてようが、どうだっていいの。気にしすぎだよ」
「嵐様……」
土山が白髭に涙の水滴をつけながら、希望に満ちたような目で写宮を見た。
写宮はそれに対して、にっこりと柔らかく微笑んだ。
お互い、二人の世界に入っていたので、
執事とご主人様……。
しかも、老執事……。
これまた新しい。
なんて思って、冷めた瞳をした知香と柳など、気にも留めなかったという──…。
..fin
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