恋人のお見舞い

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「………」 紅葉の世界はほとんどがこの病室なのだ。季節感がない、この白くて無機質な病室。ここで過ごしている、それを思うと胸が苦しくなる。 「ごめんね。せっかくの夏休みなのに…」 重くなった空気を察した紅葉は少しふざけたように言った。だから俺も合わせる。 「ば~か、病気なんだから仕方ないだろ?」 「そうなんだけどね」 暗くなった紅葉を明るくしようとする。 「でも、5日後になればみんなと海に行くんだし、それまでの我慢だろ?」 「うん、そうだね楽しみ~」 笑う紅葉を見て安心する俺はホッと胸をなでる。 「ああ、俺もだ、外泊する日は空いてるよな?」 「もちろん!空いてるに決まってるでしょー」 待ちきれないと言わんばかりに身を乗り上げる。しかし、俺も楽しみなのだ。紅葉と外で遊ぶのは春以来なのだ。
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