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「光嗣君、あなたにお客様よ」
ゆっくりと本を閉じる
僕に客?
誰だか見当も付かない
「院長……どなたがいらしたんですか?」
「あなたの新しいお父さんとお母さんよ」
意味が分からない
僕は捨てられたんだ
ゴミのように
死ぬ寸前に発見された
されなければ良かったのに
同じ孤児の中でも浮き、拾った孤児院の院長にさえ疎まれる
僕はあのまま死んだ方が良かったに違いない
「と…とりあえず会ってみましょうよ。優しそうで、素敵な夫婦だから……」
悪くはないかもしれない
こんな掃溜めのような場所で一生を過ごすのはゴメンだ
これはいい機会だろう
「…………はい」
頷いて、院長についていった
「こんにちは、光嗣君。院長が言った通り、賢そうな子だね」
「それにとても可愛らしいわ」
院長に連れられた応接室に居たのは、一組の夫婦
革張りのソファーから立ち上がり、僕に声を掛ける
二人共身形は小綺麗で、品性もありそうだった
「こんにちは」
本を抱えたまま、頭を下げて挨拶をする
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