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「あれ? 煙草辞めたんじゃなかったの?」
部屋に入ると、四畳半の狭い部屋で白い空気が動いた。比喩とかではなくて、実際に動いた。彼はすでに煙でいっぱいになった部屋で、灰皿に吸い殻を生産していた。
「おかえり。どうだった?」
「あ、うん! すっごい良かったよ。雪とかぶわぁって降ってた。お土産も買ったよ。白い恋人!」
わたしはたった三日の連休を利用して、知り合いと北海道に行っていた。彼がいることはまだ言っていなかったため(なかなか言い出す機会がないのだな、これが)、彼にはお留守番をしてもらっていた。
「あはは、お土産がベタだなぁ。にしても雪が降るってことはあれかね。マイナス何度とかだった?」
「わかんない。たしか二度くらいだった気もするけど……それより、珍しいね、煙草」
彼は目線を下に落として小さく笑った。これはなにか有ったな、と思った。
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