20人が本棚に入れています
本棚に追加
2
夜明けと同時に、イーギスはサイラフに向けて、出発をした。
昼前には、隣り街のカイラに辿り着く事ができた。
カイラはキルスとは違い、のどかな農地が広がっている。
腹ごしらえを兼ね、小さな食堂へとイーギスは足を運んだ。
此処でも、カザフィルとの開戦が主な話題になっていた。
〔やはり、噂は事実なのですね…〕
イーギスの脳裏には、欲に目が眩んだジェダ国王の姿が浮かぶ。
運ばれてきたスープに手をつけながらも、イーギスは国王の事を思い出していた。
「何故、王は無益な争いを好まれるのですか?」
そう尋ねたのは、ツバイが襲撃される三日前。
その時はまだ、国王を信じていた。
「さあな。もしかしたら、この国を滅ぼしたいのかもしれん。それとも、他の国を滅ぼしたいのか」
国王とイーギスは乳兄弟だったせいか、昔からそれなりに仲が良かった。
そのよしみで、時間があればこんな風によく話をした。
「私は、王には向かない。民の生活も、政(まつりごと)も何の関心もありはしないのだ」
そう呟いた王の眼には、狂気が宿っていた。
「ならばイーギス、お前は何の為に、その剣で人を斬るのだ?」
王の言葉に虚を突かれたイーギスは、真剣に考え込んでしまった。
国を護る為?
自分を守る為?
様々な疑問が浮かんでは、それを打ち消すように頭を横に振る。
最初のコメントを投稿しよう!