第一章

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2 夜明けと同時に、イーギスはサイラフに向けて、出発をした。 昼前には、隣り街のカイラに辿り着く事ができた。 カイラはキルスとは違い、のどかな農地が広がっている。 腹ごしらえを兼ね、小さな食堂へとイーギスは足を運んだ。 此処でも、カザフィルとの開戦が主な話題になっていた。 〔やはり、噂は事実なのですね…〕 イーギスの脳裏には、欲に目が眩んだジェダ国王の姿が浮かぶ。 運ばれてきたスープに手をつけながらも、イーギスは国王の事を思い出していた。 「何故、王は無益な争いを好まれるのですか?」 そう尋ねたのは、ツバイが襲撃される三日前。 その時はまだ、国王を信じていた。 「さあな。もしかしたら、この国を滅ぼしたいのかもしれん。それとも、他の国を滅ぼしたいのか」 国王とイーギスは乳兄弟だったせいか、昔からそれなりに仲が良かった。 そのよしみで、時間があればこんな風によく話をした。 「私は、王には向かない。民の生活も、政(まつりごと)も何の関心もありはしないのだ」 そう呟いた王の眼には、狂気が宿っていた。 「ならばイーギス、お前は何の為に、その剣で人を斬るのだ?」 王の言葉に虚を突かれたイーギスは、真剣に考え込んでしまった。 国を護る為? 自分を守る為? 様々な疑問が浮かんでは、それを打ち消すように頭を横に振る。
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