第一章

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剣を手に取り、人を殺める理由。 騎士になる前も、なった今でも、そんな事は一度も考えた事はなかった。 騎士として剣を手にするのは当たり前。 刃向かう者には死を。 それが自分の役目だと信じてきた。 それ故に、王の質問はイーギスの心に波紋を広げた。 そして、その波紋は大きなうねりとなって、イーギスを飲み込もうとしていたのだ…。 王との謁見から三日後、事件は起きた。 「イーギス様、ツバイの街が何者かに襲撃されました」 自室で寛いでいたイーギスは、従者の言葉に驚き、急いで鎧を身に纏う。 そして、謁見を求めて城へと馬を走らせた。 「王は?」 馬から飛び降りたイーギスは、門兵に王の居場所を尋ねる。 「王ならば、執務室にいらっしゃると思いますが、そのように武装されては、いかにイーギス様とは言え、お通しするわけにはまいりません」 武装したままの登城は、よほどの理由がない限り禁止されている。 内心の焦りを隠して、イーギスは従者から受けた報告を門兵に告げた。 「そのような事態ならば、仕方ありません。お通り下さい」 事情を理解した門兵が城門を開け、イーギスを中へと導いた。 城内に足を踏み入れたとたん、イーギスは疾風のごとく駆け出し、執務室へ急いだ。 執務室のある最上階まで一気に駆け上がり、重厚な扉の前で呼吸を整えたイーギスは、執務室の扉を二回叩いた。
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