序章

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街が炎に包まれる。 人々は逃げまどい、あちらこちらで悲鳴が上がる。 それに続くように、肉を切る鈍い音。 通路という通路には、骸が横たわっている。 見開かれたままの双眸は、己の命を奪われた理不尽さと、絶望を宿していた。 女、子供、老人。 見境なく殺戮者の刃が、命を奪ってゆく。 まるで生きているのが罪だといわんばかりに…。 「何という惨(むご)い事を…」 微かに煙が立ち昇る焼け跡を目にした青年は、黒く焼け焦げ、累々と転がる死体に柳眉をひそめた。 荒廃してしまった街。 この街は、青年が産まれ育った故郷。 緑豊かで、水の湧き出る泉があり、華やかで活気に溢れた商業都市。 それが今は見る影さえない。
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